あいうえおのチラシの裏

愛にうえた男の悲しい物語

シーソーゲーム

 『何遍も恋の辛さを味わったって、不思議なくらい人はまた恋に落ちてく』そういってミスチルが高らかに歌ってた頃、僕はまだ全然世間を知らない子どもで、歌詞なんて単なる日本語の羅列くらいにしか思っていなかった。その言葉の本当の意味を知るのは、それからずいぶんと年月が経ってからになる。

 

 ナンパで出会って、恋をした話でもしてみようかと思う。

 

◇◇◇

 

 やはり昔のことであるけど、初即から時間も経ってきて、僕はちょいちょい即れるようになっていた。最もナンパが面白くて、夢中になる時期。当時は暇さえあればガンガン街に出て、声をかけ続けていた。

 

 そんなある日の日曜日だったと記憶している。渋谷で女の子に声をかけて、スタバに行った。彼女は旅行者で友達との待ち合わせまで一時間くらい暇とのこと。顔はいたって普通の子だったけど、とにかく愛嬌のある子で笑顔が可愛かった。

 

 後から聞いた話だが、彼女は四人兄弟の末っ子だった。ああ、なるほど。彼女には、末っ子特有の『愛情を注がれてきた人間』特有の明るさがあった。自分が何をしようが何を言おうが、愛情は変わらずにそこにあって失われることはない、根拠なくそう考えていられるような感じ。(ちなみに長子は親から厳しく育てられて素直で真面目。真ん中っ子は、上と下に挟まれてて空気を読みがち。末っ子は容量よくて愛され上手。偏見なので異論は大いに受け付ける)。

 

 でも、そんな分析を出来たのは全てが終わってからの話であって、連れ出した当初は僕にそんな余裕がある訳もなく、とにかく会話に必死だった。フラペチーノを飲んで平静を装いながらも(平静に見えていたのかは不明だが)、如何に話を繋げていくかを少ない脳みそで必死に考えていた。 連れ出し当初、女の子の方は秘密主義な感じで、旅行で都内に来ている、くらいしか言ってくれなくて、どこから来ているか教えてくれなかった。

 出身地当てゲームと称して、当てにいったがビックリするほど全然当たらない。結局、僕の答えがかすりもしなかったので、話題を変えた。今も思うけど、会話ってほんと難しい。ない腕ながらもあの手この手で、話し続けていたが、彼女は終始、僕に興味があるのかないのかわからないままだった。フラペチーノも飲み終わってしまったので「携帯の充電したいから」とか適当なことを言って、次はカラオケに移動した。とはいうものの、カラオケに着いて10分くらいで彼女の友達から連絡が来て、ロクにギラつく間もなく時間切れ。番ゲだけして放流した。旅行者だったし、なんだかもう会えない気はしていた。

 しばらくは、単なるメル友として、だらだらと連絡を取る日々が続いた。ある時、ふと住んでいる場所をメールで聞いてみた。

 

僕「結局さ、何処住んでんの?」

女の子「名古屋だよ!言わなかったっけ?」

 

うーん、名古屋か、別に行けなくないな。。。

 

僕「じゃあ俺、名古屋いくから遊ぼ!」

 

 ほとんど準即の経験もなかったので、コストよりも経験を優先させた。 そうして、僕は新幹線に乗り込み名古屋に向かった。待ち合わせ場所でぼんやりと待っていたら、彼女は相変わらずの笑顔を貼り付けて待ち合わせにやって来た。

 

 

友達と一緒に。

 

つづく