あいうえおのチラシの裏

愛にうえた男の悲しい物語

美大の女の子

 なんだって初めてのことは良く覚えている。特に恋愛関係の記憶なんて最たるもので、初めて付き合ったこと、初めてキスした時のこと、初めてセックスした時のこと。30代の僕からすれば、かなり前のことのはずだけど、今でも脳みそに焼き付いている。 いや、少し嘘をついた。実はもう細かいディテールとかは、結構忘れてしまっていることも多い。人生を振り返ると、朧げな記憶の中、楽しかったことや悲しかったことがぼんやりと夜道を照らす灯りのように浮かんでいる。

 

 このブログの記念すべき最初の(まともな)記事なので、初めて即った時の話でも書こうかと思う。ちなみに本当にチラシの裏に書くべき話なので、あくまでも僕の100%純粋オナニーです。でも、なるべく人が見て面白いオナニーをするつもりなのでよろしくお願いします。

 

閑話休題

 

 さて、話は5年以上も前に遡る。当時はギャル男とかホストが全盛期で、僕もとにかく細身のトップスとジーンズを身につけ、過剰にアクセサリーをジャラつかせつつ、つま先の尖ったブーツを履いていた。その頃のナンパ師は、まるで、雄の孔雀みたいに派手であれば派手であるほど良しとされていた。今と違って一般人とスト師のルックス格差が激しく、傍目からみても「こいつヤベェな」という感じの、ギラギラと人を威圧するような格好ばかりだった。当時、結果が出ると言われていたテンプレの服装はそういうホスト系とかお兄系だったので、駆け出しの僕も安直に真似をしていた。

 

 ナンパを初めて数ヶ月も経ったがロクに声もかけられず、番ゲ(※当時はLINEなんてものはなく番号かメアドを聞いていた。「赤外線しよ!」が常套句)出来たらすごいし、連れ出しとか片手で指折り数えられるくらいだった。 なかなか即までは至らなかったが、番ゲとかならたまに出来つつあったので、定期的に仲間と夜の街に繰り出していた。

 しばらく声かけしていたものの、思うように番ゲもできていないある日。夜9時頃にローカル駅付近でフラフラ歩いている女の子に声をかけた。 明るい茶髪のちょっとギャルっぽい感じ。でも、キツいギャルというか優しそうな感じ。いわゆる即系だったけど、顔はまあまあ好みだった。声かけから何を話したのか、あまり記憶にない。きっと、たどたどしく「今暇だから遊ぼう」みたいなことを言ったと思う。当時は話運びなんて拙いもので(※今も対して変わらないという説。諸説あり)、ほとんど和みなんて出来てない状態からの打診だった。でも彼女は、軽い感じで了承してくれた。今から予定あるけど変えるよ、と言って携帯をいじりだした。会って間もない俺のために予定を変えてくれるんだ、と呆気にとられた。不思議な子だった。

 それから、カラオケに行って話をした。ローカル近くの美大の子で、別の地方から来た子だった。美大に行きたくて、課題の絵を何度も提出して、なんとかギリギリで入学できたと言っていた。 絵を描くのが好きだけど、才能がなくて困っているみたいな話をしていた。即った女の子の属性なんてほとんど忘れるのに、その子のことは覚えている。

  話の運び方なんかも、極力平静を装ったつもりだったけど、絶対ぎこちない感じになっていたと思う。心臓の高鳴りを抑えつつ、ぎらついた。キスから手マンまでノーグダだったけど、エッチしたいと言ったら軽くグダった感じをみせた(※今考えると別にカラオケでもいけた気はするけど当時はわからなかった)ので、ホテルに行ってセックスした。挿入している時も頭の中は、『あー俺、付き合ってもいない女の子とセックスしちゃってるわー。まじ不思議だわー。ていうか、付き合ってないのにセックスしちゃってるけど女の子はこれ嫌じゃないんか、普通のことなん?』とかセックスしながらも頭の中の思考はぐるぐるしていた。

行為終了後、なんとなく番ゲも打診しせず、フルネームもよくわからないままバイバイした。

 

彼女はいまどこで何をしているんだろう。絵を描いて幸せになっているかもしれないし、結婚して家庭を築いているかもしれない。でも、たぶん君がいなかったら、今の僕はいなかったのだろう。感謝している。女神が、これから始まる数々の出会いと別れの門を切り開いてくれたのだった。